「三井くん、あの……監督さんが倒れたって聞いて……、大丈夫?」

は約束どおり控え室に顔を出した。
本来なら、監督が倒れて不在だと聞いていたのなら控えるべきかと
は最後まで控え室の前をうろうろしていたが、
最終的にトイレに行こうとしていた三井が控え室から出てきて
見つかった形になり、今こうして二人は対峙していたのだった。


「今日の試合は荒れるかもしれねぇ……。けど、必ず勝って、
俺があいつらを全国に連れて行く。それが、俺に出来る罪滅ぼしだ」
「罪……、噂は、本当だったんだ?」
「噂?……ああ、軽蔑したか?」


三井は不安そうな表情をしてに尋ねた。
これで拒絶されるようであれば、自分がに対して抱え始めた気持ちは
きっとすべて拒絶される。もしも、気持ちにケリをつけなければいけないとすれば
それはこの段階だろう。
しかし、の答えは三井の思ったものとは違っていた。


「ううん、軽蔑なんてしないよ。どんな軽蔑されるべき行動にも、理由はあるもの。
軽蔑するかしないかを決められるのは当事者だけ」
……」
「あ、そういえば、話があるって言ってたよね……?何?」
「あ、ああ……。その……今日勝ったら、全国なんだよ」
「うん」
「俺死ぬ気でコートに立つからよ、今日だけは俺だけの応援……してくれねぇ?」


三井の言葉は照れが混じっているのか、最後のほうはゴニョゴニョと
聞き取り辛かったけれど、の耳にははっきりと届いた。


「……るよ……?」
「へ?」


それに対してのの答えは、三井の浮き足立った状態の耳には
少々は入りづらいもので、三井は思わず聞き返す。


「だから……、ね、私は、湘北も応援してるけど、その中でもいつも
三井くんの応援してるよ……って言ったの……」
「あ、え、あの…………、それって……」


三井はその真意を測りかねていた。
都合よく受け取ってしまいたい、けれど、そうするには情報が少ない気もする。
もぞもぞとしていると三井の前に、彩子が現れた。


「三井先輩、そろそろ」
「え!?あ、彩子か……」


三井は急に現れた彩子にビクリと肩を跳ねさせて振り返った。
これが宮城や桜木でなくてよかった。
完全にからかいの対象にされてしまう、と思って。
三井を呼びに来た彩子は、三井の影に隠れていたを見て
ああ、そういうことか、と邪魔してしまった自分を苦笑した。


「……あ、先輩……。来てくださってたんですね、邪魔しちゃってスミマセン」
「あ、いいの!いいの!ただの激励だったし!ね!」
「お、おう!……じゃあ、俺行くし、堀田とか見つけたらあいつらと一緒にいろよ?」
「うん」


三井は、そのまま彩子と一緒に連れ立って控え室に戻る。
県予選決勝リーグ、運命を分ける戦いが始まろうとしていた。













ずっと君を見ている