「三井くんってカッコイイね」
「は!?」
「彩子ちゃんがね、湘北の飛び道具って言ってたの。そういう肩書きすごくカッコイイなーって」
「あ、ああ、そういうことか。びっくりするじゃねぇか」
「あ、でもね、あのスリーポイントはかっこよかった」


三井の心臓が早鐘を打つようにドクドクと脈打つ。
かっこよかった、そんなことバスケをはじめてから何度も言われた言葉だったが、
が言うそれは破壊力が違った。


「あのさ、……」
「あ!あの公園ゴールがあるよ!」
「え、あ、そ、そうだな」
「三井くんボール持ってるよね?三井くんのスリーポイント見たい!」
「しょうがねぇなぁ……」


三井とは公園に向かい、三井は持っていたバスケットボールを取り出した。
俺様の雄姿をその目に焼き付けておけ、そう軽口を叩いて、
何度かボールをバウンドさせると、おそらく今日一番のキレイなフォームで
リングに向いボールを放つ。
は息を呑み、その様子を見つめ、ボールがリングに吸い込まれる様子を焼き付ける。


「すごい……」


リングを通り抜けたボールが、テンテンとの足元に転がり
はそれを拾いあげた。


?」
「私にも出来るかなぁ……」


ボールを持って、スリーポイントラインまで下がりは三井のようにボールを構えた。
何となく見よう見まねで、ボールをゴールに放ってみる。
しかし勿論ボールはエアボール。
リングに届くこともなく、空を切って、テンテンと音を立て転がった。


「歌姫は、スポーツは苦手か」


三井はその様子を可愛いと思いながら笑って見ていた。


「もう、笑うことないじゃん。三井くんみたいに投げてみたら届かなかっただけだもん」
「そりゃ未経験者の上に女がワンハンドでスリーポイントはきついだろ」
「そうなんだ」
「女は両手使って投げた方が届く」
「へぇー、よし!もう一回!!」
「へーへー」


は再びボールを構える。


「う、おりゃあ!」
「その叫び、要るか?」

の妙な気合を乗せて放ったボールは、マグレの奇跡でリングに吸い込まれた。


「お、ビギナーズラック」
「やったー!!入ったよ、三井くん!私、来世はバスケするわ!!」


は三井の手をとってピョンピョンと飛び跳ねた。
シュートが決まって嬉しそうなの笑顔と、つながれた手を意識して
ドキドキ、と三井の心臓が激しく鼓動する。


「あ、三井くんごめん!手なんて……気に障ったよね」


眉間に皺を寄せている三井の真意など分かるはずもなく、
はその手を離そうとした。
しかし、今度は三井によって、その両手は握られる。


「三井く、」
「悪い、……、キスしてぇ……」


三井はの返事を聞く前に、の身長にあわせ屈み込み、
優しく触れるだけのキスをした。
ボールと、月だけが、そんな二人を見ていた。










月とボールだけが、見ていた