てくてくてくてく
三井はギターを抱えて少し歩調の遅いにあわせながら隣を歩く。
「なぁ、。いつもこんな時間まで歌ってんのか?」
「ううん、最近は特別。もうすぐロックフェスタなの」
「何だそりゃ?」
「うーん、バンドのインターハイ?見たいな感じかな。
全国の高校生バンドの祭典、うちら本選に出場することになって」
「へぇ、すげぇじゃん」
「三井君たちもすごいでしょ?決勝リーグ次第では全国でしょ?」
お互いその事がどれだけすごいのか、自分のフィールド外のこと、
専門的なことはわからない。
けれどとりあえずすごいということは理解できるので、
素直にすごいと賞賛を送りあう。
「まぁな、次の試合負けたら終わりだけど」
「次、陵南でしょ?赤木くんたちが話してた、強いの?」
「まぁ強い、けど負けねぇ」
「頑張ってね?」
三井とは歩きながら、他愛も無い言葉を交わす。
は見た目決してケバくはないが、お洒落は好きなのだろう。
イマドキの雰囲気を醸し出している、と三井は思った。
不良時代はまるで娼婦かといわんばかりの女しか相手にしてこなかった。
部活を初めて接するようになった彩子の雰囲気とも、
赤木妹の雰囲気ともちょっと違う、初めての人種ともいえる。
でも、話はしやすい。
三井はそんなことを考えていた。
「なぁ、ロックフェスタってのは優勝とか決める大会なのか?」
「うーん、グランプリとか賞を貰ったりとか、かなぁ」
「それ取ると何か良い事あるのか」
「グランプリはCDデビュー」
「お、それすげーな!お前の歌、さっき聞いたときすげー引き寄せられたんだよな、
きっとグランプリ取れるぞ!」
「……あ、ありがと……三井くん」
知衣子はその言葉に驚くも、認めてもらえた嬉しさで少し頬を赤らめた。
「ねぇ、三井くん陵南戦っていつ?」
「は?何でそんな」
「ルカワ君のファンなの」
「な」
「友達が。だから、ついていってあげようかなと思って」
「そ、そうか……」
「三井くんは私がどんなことしてるかさっき見て知ってるけど、
私は知らないし、なんかズルイ気がして」
「……」
「三井くん?顔赤いよ?」
「何でもねぇよ」
三井は赤なる顔を隠そうと口元を手で覆った。
かえりみち