「赤木、それじゃ今から予選抽選会行って来るわ。今年は彩子も連れて行くから」
、ああ頼んだ。彩子も来年から一人で行ってもらわないといけないからな」
「リョータが護衛についていくんじゃない?」
「……それはそれで問題がありそうだ……」
「アハハ、あ、そうだ、くじ運は期待しないでね。っていってもどのブロックになっても大変なんだけどさ」
「それもそうだ、でも全国に行くのは湘北だ」
「そうだそうだー!」

校舎内であることも忘れて私と赤木は気合を入れていた。
そう、今日はインターハイ神奈川県予選のための抽選会。
海南、翔陽、陵南……強豪校がひしめく中、インターハイに行けるのは
決勝リーグにを勝ちぬけた2校だけ。
正直苦しい戦いになるのは間違いない。
でも私には漠然とした自信があった。
今年は、全国に行けるかもしれない、そんな自信が。

彩子を連れて抽選会場を訪れれば、
そこでは既に火花が散っていた。

先輩、抽選会場もすでに戦いが始まってるって感じですね」
「まぁねぇ、でも私毎年この雰囲気嫌いなのよ」
「何でですか?」
「ここで私達が戦っても仕方ないでしょう?戦うのはあいつら。
苦しい練習を耐えているのもあいつらなんだから、私達くらいは冷静にくじ引きしてやらないとねぇ。
てかくじ引きで一触即発って……浅いわ」
先輩って大人だわ」
「高3だぞ、私は」
「そうでした」


抽選会も終わり、私達は湘北高校に戻る道すがら彩子と他愛も無い話をする。


「そういえばさ、部活中は聞きにくかったんだけど彩子ってリョータと付き合わないの?」
「え?いいんですよ、私達はこの距離感で遊んでるだけですから」
「それはそれは大人の発言ねぇ」
「そ、そんなことより先輩ですよ!!」
「え?私?」
「そうです!ぶっちゃけ聞きますけど1年のときとか三井さんと付き合ってたんですか!?」
「は?どうしてそうなるかな?……付き合ってないけど」
「でも、仲は良かったんですよね?襲撃事件のとき殴りかかってたし」
「うーん。どうなんだろ、一年のときは赤木と、木暮と三井、とは仲良くしてたかな」


三井が辞める前まで、私達は確かによくつるんでいた。
口を開けばやれ戦略がどうの、先輩たちの練習態度がどうの、どう改善するか
そんなことばかりを近くの定食屋で語り合ってた気がする。
最後には絶対に全国に行くぞと言って締めくくって。
赤木と小競り合いしている三井と、それを諫める木暮と、必死でルールを勉強する私。
少し懐かしいなと私は目を細めた。
けど、彩子の口からまさか三井と付き合ってたのかという質問が飛んできたのは正直驚いた。
別に付き合ってはいなかった。
そういう噂になったことはあるけど、三井も私も否定していた。

「あ、そうだ。昔、部活が終わった後ね、三井が私のところに来て、
[赤木と木暮じゃなく俺が全国に連れて行く]って言いにきたときはなんかびっくりしたけど。
そういうのは好きな子に言うもんだよなーって」
先輩……それは……(確実に遠まわしの告白じゃ……)」
「全国は一人ではいけないんだから、周りも頼れって行ったけどね」
「あはは……(哀れ、三井寿……)」

そんなことを言われたこともあったな、となんだか懐かしくなって。
その言葉を思い出したら、少しだけ胸がぎゅっとなって、

「……?」
先輩?」
「あ、なんでもない。んー、初戦は三浦台かー。先は長いなー。あー!シード権欲しい!!」
「一回戦敗退じゃ無理ですよ」
「だよねー」

今はまだ、小さな心の変化に私が気付くはずも無く。
ただ三井が戻って、バスケをしてる、それだけでよかったんだ。







抽選会とその後