「」
「ん?なに、三井」
「練習終わったら、ちょっと付き合え一緒に帰るぞ」
「……?うんわかった」
この日の練習も終盤に差し掛かったとき、私は三井に一緒に帰ろうと誘われた。
「センパイ、三井センパイと帰るんすか?」
「流川……うん、よくわかんないけど何か話しがあるんじゃない?」
「気をつけてください」
「は?」
「三井センパイ、ふりょーだから」
「アハハ、もうアイツはグレ期からは卒業したわよ」
「(この人は、何にもわかってねぇ……。いや、本当は分かってんのか?)」
流川が一瞬舌打ちしていたけれど、
特に断る理由も、流川に気を遣うだけの理由も無い。
どうせ何か心配事でもあるんだろう。
三井は見かけによらず、ナイーブな所があるから。
私はそんなことを思いながら、三井の元へ向った。
「ごめん、待たせて」
「いや、……じゃ、帰るか」
「うん」
帰り道、靴がアスファルトと擦れる音が大きく響く。
どちらも、何も話さない。
「…………」
「…………」
三井に帰ろうと誘われた。付き合えといわれたのだから、
多分何か相談事でもあるんだろう、そう思って私はOKした。
けど、当の三井は押し黙ってただ歩いている。
心の中では誘ったのはアンタなんだから、さっさとなんか話題振れ、と悪態をついたけど、
三井はそわそわした様子で喋ろうとはしない。
不思議と私の中で二年のブランクと、この沈黙が重いわけじゃなかったけれど、
どうせなら楽しく帰りたいとは思うので、仕方なく三井に話しかけた。
「ねぇ、三井」
「ん」
「おかえり」
「……?」
「あんたが戻ってきてから、ずっと言ってなかったからちゃんと言っておきたかったの」
三井は私の言葉に、照れたようなばつが悪いような表情を浮かべていた。
「、……その……心配かけたな」
「ホント、心配した。もう最後の夏なんだからね?」
「ああ分かってるよ。戻ったからには仕事はきっちりする」
「インターハイに連れて行くって約束して」
「ああ、約束する」
そういった三井の表情は、さっきの罰の悪いそれからは打って変わって
いい物になっていた。
「なぁ、、全国行けたら……」
「ん?」
「……いや、まだいいわ」
「何それ、変な三井」
私達は二年ぶりのこの状況を楽しむように笑った。
「じゃあ、私こっちだから」
「おう!また明日な!!」
お互い笑顔で手を振った。
こんな日がずっと続けばいい、私はそんなことを思いながら帰路に着いた
かえりみちの誓い