桜木軍団の突然の加勢によって、形勢が逆転。
けれど、形勢が変わったところでこの惨劇が元に戻るわけではない。
ヨーヘーくんが三井をボコボコにしていて、本当は止めたかった。
けど、止めちゃいけない。
三井の目を覚ましてくれるのは、きっとこいつらだから。
けど、それでも、三井を最後に目覚めさせるのは、私たちでありたかった。
「木暮、私達は……私達に出来ることをしよう」
「……由佳……わかった」
木暮はそういうとヨーヘー君の肩を掴んだ。
「もういい。……もういいよ」
「……木暮……」
「もういいだろ」
「くそ!!」
木暮がそういうと、三井はその頬を叩いた。
木暮のメガネが、無残に床に落ちる。
けど、木暮は、何も動じてなんか居なかった。
赤木がいないんだ、私と木暮が何とかしなくては。
木暮は腹をくくっていたようだった。
「大人になれよ、三井……」
そういった。
皆驚いてる、けど、私は驚きなんかしない。
他の連中がみんなやられて尻尾を巻いて逃げようとすると、
そこには赤木が立っていた。
赤木も秘密の特訓中だといってそのドアをもう一度閉めた。
先生たちは文句を言っている。
赤木は、つかつかと三井の下へ。
そして何発も平手を打ち込んだ。
「由佳さん、三井って……」
「……っ……」
「三井は、バスケ部なんだ……」
答えられなかった私に、木暮が助け舟を出してくれた。
「俺たちの学年でバスケをやってて、武石中の三井寿を知らない人間は
いなかったよ」
木暮は、昔話をはじめた。
三井が全中のMVPプレーヤーだったこと、
私と、木暮と、赤木と、全国制覇を誓ったこと。
そして怪我をして、湘北バスケ部から去っていった事。
「うるせぇ!!」
「三井、足はもう治ったんだろ、だったら、だったら一緒にやろうよ」
木暮は三井につき飛ばされても、文句言うことなく三井を説得した。
私には、この2年出来なかったこと。
木暮が私の気持ちを代弁するかのように言ってくれた。
「ばっかじゃねぇの!!いつまでも昔のことでごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ!!」
3年全員、アンタに手を差し伸べてるの。気付いて。
私はそう願った。
でも、私には分かる。
こうやって受け入れてくれている事が三井の心を乱しているということに。
「バスケ部なんてただのクラブ活動じゃねぇか!!つまんなくなったからやめたんだよ!!」
三井がそういうと、今まで穏やかだった木暮の顔が変わった。
湘北高校バスケ部の危機 中編