「おい、土足で上がるなよ」


木暮がそういうのも聞かず、
三井と不良たちは体育館を汚すように上がってくる。


「俺らも混ぜてくれよ」
「……三井さん」


三井という名前を聞いて部員達がざわつく。
そう、リョータを病院送りにしたのは、三井だから。
そんな三井が、体育館にやってきた。
バスケ部に何をするの?あんたの大好きなバスケ部に、何をするの?
三井の目は、リョータに向っていた。


センパイ、下がってろ」


流川が私の手首を掴んで、背中に私を隠すようにかくまった。


「……三井……」
「…………」


私はそう呟いた。
その声が届いたようで、三井は私の苗字をつぶやくと一瞬顔をゆがめた。


「三井サン、こいつら引き上げさせてくれ、
俺も怪我をするわけにはいかない。ここは大切な場所なんだ」


リョータの言葉が重たい。
きっと三井の心に重くのしかかっているはず。
けれど、そんな思いも虚しく、三井はボールにタバコの火を押し付けた。


「なにすんだテメエーーーー!」


桜木が怒りに震えている。
だめ。
手を出したら。


その時だった。
流川はボールをものすごい勢いで、不良の一人にぶつけた。
その矛先は三井だったのだろう。


「……チッ、外れた」


流川は涼しい顔をしてそう言ってのけた。


「おい宮城、お前よりやる気あるんじゃねぇか」


三井は、リョータに向けて思い切りボールを蹴った。
そのボールはリョータの鳩尾にクリーンヒットする。
ごめん、リョータ、ごめん皆、私、もう我慢の限界だ。


「あっ、!!だめだ!!」


木暮の制止も聞かず、私は三井の元へ走る。勢いを付けて、
全体重をかけて、三井に飛び掛った。


「三井……ふざけたことしてんじゃないわよ!!何やってんのよ!?答えて!!」


三井と私は体育館の床にもんどりうつように倒れこむ。


「……、テメェ……その手離しやがれ!」


一瞬の間があった後、三井は私の身体を全力で突き飛ばした。


「っく!!!」


私の身体は瞬間的に宙を浮き、


!」
さん!」
先輩!!」


私なんて気にしなくていい。
リョータが、ボコボコにされていく。
廃部だ、なんだと卑怯な言葉をちらつかせながら。
桜木も流川も我慢の限界を迎えている。
安田だけは冷静に三井に帰れといったけど、それもダメ。
安田は三井に殴り飛ばされて、鼻血を出している。


「三井、何でそんなことするの!?やめてよ!三井!!」


その言葉を聞いてか聞かずか流川が前線に飛び出す。
手を出したら終わり。
彩子も殴られて、リョータが切れて、もう、めちゃくちゃだ。
私が出来ることは今狙われてる彩子を守ることだ。


お願い、だれか、助けて。
三井が苦しそう。
みんなが壊れてしまう。
バスケ部が壊れてしまう。
お願いだから、三井を止めて。


「はいやああああーーー!」
「正義の味方参上!」



湘北高校バスケ部の危機 前編