「センパイ、フリースローで勝負してほしいっす……」
「は？」

湘北高校バスケ部マネージャー２年の、
現在スーパールーキーの流川楓に完全に目を付けられてしまいました。
目を付けられたなんて普通の女子が聞いたら発狂モノだろう。
でも流川はただフリースローをしようと勝負を挑んできただけ。
この男の頭の中はおそらくただただバスケのことで埋め尽くされているのだろう。


「だからフリースロー……」
「嫌に決まってんでしょ、昔からフリースロー苦手なの！富中時代から知ってるでしょうが！」
「ウス、知ってるっす。センパイのフリースローは、どあほう並み……」
「知ってて言ってるの……？てか桜木よりはマシよ！」
「じゃあ、1ON1でいいっす」
「もっとイヤだ！勝てる気しない」
「……だから、フリースロー……」


何度断っても、勝負を挑んでくる愛想もクソもない後輩に頭を抱えつつ、


「あー、もう！分かったわよ！！やればいいんでしょ、やれば！！」
「ウス、１０本、より多く入れたほうの勝ちっす」
「……なんでこんなことしてんのかな……私」
「センパイ、俺が勝ったら何でも一つ言うこと聞いてください」
「えー、じゃあ頑張って勝たなきゃ。どうせ晩御飯奢れとかそんなんでしょ」


面倒くさいなぁ、と思いながらも勝負事となれば、も真剣そのもの。
勝つ事に全力を尽くしてフリースローラインに立つ。
何回かダムダムとボールを突いて、ボールを投げる。
そのシュートはキレイな放物線を描いて、リングに吸い込まれた。


「よし！まず一本！」
「む」


交互にシュートを放ち、一進一退。
けれど、の最後のシュートは外れてしまった。

「あああー！ま、負けた……いいセン行ってたのに……！悔しい」
「負けは負けっす」
「……このクソガキ」
「口悪いっす」
「誰のせいだと思ってんのよ」


負けは負け、は観念して流川に向き直った。


「あーもう分かった！負けた負けた！で何をしたらいいの？言ってごらんなさい！」
「キスして欲しいっす、センパイから」
「……はい？」
「だからキ」
「聞こえてるわい！何でそんなことしなくちゃいけないのよ！」
「……好きなんで、センパイのこと」


の顔が茹蛸のように真っ赤になるのが自分でも分かった。
流川は、目を閉じて待っている。
どこのオトメだ！と心の中で悪態をつきながら、これはバツゲームだ、
この前宮城と三井は王様ゲームでキスさせられていた、そうだそれと同じだ、
そう言い聞かせ、は流川の唇に自分のそれを重ねた。


「こ、これで満足？」


が尋ねると、流川は少し考えてコクリと頷いた。






フリースロー、１０本勝負！





（センパイ）
（まだ何かあるんでしょうかねー、流川くん）
（明日は1ON1で勝負っす）
（ふざけんな、勝てるわけ無いでしょ）
（明日の頼みごとは大事なんで）
（……何言う気……？嫌な予感しかしないけど）
（……付き合って、センパイ）