秋の実力テスト期間、ついこの間1学期の期末テストを
受けたばかりなのに、受験生はとにかくテスト、模試、課外の繰り返し。
明日がテストの最終日。
みんな必死で勉強に励んでいる。
シャーぺンがノートをさらさらと動くこの音がどことなく苦手に思えて、
教室の雰囲気がいささか険悪になってきたかなと思えて、
私はその息苦しさから逃れたくて、開放感溢れる屋上へと向った。


「……三井……」


屋上に行けば一人になれると思ってたのに。
結局私が思いつくことは誰かも思いつくわけで、屋上には先に
三井が寝転んで空を見上げていた。


「うわ、じゃん。部活顔出さなくなったら全然会わなくなったな」
「生憎、私はアンタと違って学力ノーチャンスでも、推薦狙でもないの」
「いい方に棘があるんだよ、


私は三井の隣に寝転んで同じように空を見上げた。
羨ましい、それだけ。
三井には、バスケしか見えないのだろう。
皆が必死で勉強する中、三井にとっては、バスケが勉強と同じ意味を持つんだ。
私は夏までバスケ部のマネージャーをしていた。
だから、コイツの素行の悪さも、そのあとの頑張りも全部見てきた。


「だから言ったじゃねぇか。落ちるときは落ちんだからよ、マネ続けろって」


そして、好きになった。
この憎まれ口を叩く、未だに引退しないバスケ馬鹿を。


「……そうかも、ね」
「あ?」


この青い空と、鳥かごから出られない鳥のようにじたばたしている状態で、
いささか感傷的になっていたのかもしれない。
いつもなら出てこない言葉がポロポロ零れ落ちる


「目閉じるとね、山王とやったときのこと……全部思い出すの」
「……」
「三井が必死で決めるスリーポイントがネットを抜ける音が、耳から消えない」
?」
「シュートが入ったときの三井の表情が、忘れられない」


「三井が、好き」


そういった瞬間、三井は私に覆いかぶさって、私達はキスをした。


「やっぱ引退さすんじゃなかった」
「……三井……」
「選抜予選、絶対勝つからよ。全部見に来い」
「最高のスリー、お前に見せてやるからよ」




青い空の下、僕たちは




(にしても、……、お前告るの遅ぇんだよ、)
(三井こそ、いきなりキスなんて手が早い。さすが差し歯)
(差し歯関係ねーだろ、何ならここでヤッちまうぞ)
(もっと他に言うことないの?)
(……俺も好き、だ。
(素直でよろしい)