「三井ってパズル好き?」
「……別に好きでも嫌いでもないけど、どうかしたか?」
「これあげる」
「何これ、ジグソーパズル?」


三井がクラスメイトのから受け取ったのは小さめのジグソーパズル。
箱の表面に書いてある完成図は一切何も描かれていない真っ白なキャンバス。


、これ真っ白じゃねぇか、時間かかりそうだぞ?」
「いくら時間かかっても良いから、必ず作ってみてよ」
「何だそりゃ?」
「いいから、いいから」
「まあいいや、とりあえずやってみるわ」
「出来上がったら教えて」


三井にとって、実は密かに思いを寄せるからのプレゼントとあれば、貰わない手は無いわけで。
なるべく気持ちがばれないように、三井は平常心を装ってそっけない返事を返した。


部活も終わり、疲れた身体を引きずりながら、三井は自宅へと向う。
玄関を開けてリビングを通れば、タダイマくらい言えと母親の声が飛ぶ。
冷蔵庫からポカリのペットボトルを取り、
自室に入ると適当にカバンを投げ、ベッドに身を投げ出しから貰った
小さめのジグソーパズルを手にとって眺める。


「まぁ、暇だしやってみっか」


宿題はどうした、という突っ込みは今更ということにしよう。
三井は使用頻度がゼロに近い学習机に向かいパズルの箱を開けた。


「ん?何か書いてるのか?」


真っ白だと思って臨んだパズルのピースはバラバラだけれど黒いマジックで
何か書いてあるようだった。


のヤツ、何遊んでやがるんだ……」


悪態をつきながらも、三井はついついが何を書いたか気になって
無心にパズルを組み立てていく。


一文字目、
「ミ、……?」
二文字目
「ツ……?」
三文字目
「イ……」


四文字目
「ス」


ドクン、と三井の心臓が鳴る。
体中の血液が顔に集まってきたかのようだった。


五文字目
「キ……って、マジかよ……」


誰にも見られてないよな、と心の中で呟きながら、三井は口元を手で覆った。


のヤツ……恥ずかしいことしてくれるじゃねぇか……」


一週間後、三井は放課後、を呼び出し、軟禁とばかりに机に向わせた。


「三井、私そろそろ帰りたいんだけども」
「うるせぇ、お前にパズルを買ってきてやった。今すぐ、作れ」
「はぁ!?何その俺様!頼んでないし」
、言い逃げはよくねぇよ」
「う……」
「とりあえず作れ」


作り上げるまで帰してくれそうも無い。
しぶしぶはパズルを作り始める。
三井の返事が分かるまで、あと1時間。





パズルがとけたら




(俺に、突いて来い……?)
(どうだ!)
(突いて来いって、漢字違うし。つつけばいいの?)
(何だと!?)
(ツンツン……バカなんだからひらがなでよかったのに)
(うっせー、つつくな!!)